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第八十一話

会陰切開のあたりで、感想というか、読者の
出産体験記がきましたので、載せさせて頂きます。

「えーまず一人目、あれは普通の産婦人科であった。
 もう帝王切開してくれと言わんばかりの激痛、「私死
 ぬのね」と思った瞬間、「いきむ」私へ 医者が「そろ
 そろ切るね」と「へっどこ切るの?」と考える余裕が少
 しあった・・・それが最 悪の結末へと向かい「バチッ」
 って音がした瞬間「あんた切ったわね」と感じる痛みが・・・
 ばかやろー
 二人目、今度は大学病院であった。
 2回目ともあって少し余裕のあった私、こんな感じだった
 わね。なぁーんて思ってるのもつかの間、また帝王切開
 してくれバージョンの痛みが・・・「あーまた切られて痛い
 思いするのね」と考えながら分娩台での事。今回は何も
 言わず子供が出た!!「へっどーいう事?あんたいつ
 切った?」と思い「いつ切りました?」って聞いた。
 そしたら、助産婦いわく「ここは完全普通分娩だから切って
 ないよ」と。よくよく聞いたら「昔のお産と一緒で自然に切れ
 て子供産ませる」と言った。だから切る切らないはその医者
 次第なんだけど、そうねぇ切った方が痛いよ。問題はその後
 なんだなぁー。
 
 1回目は麻酔無しの「縫った」ってやつ
 2回目は麻酔したけど効かなくて「縫った」ってやつ
 
 そっちの方がとても痛いわよ。チクンチクンって「お前何針
 縫う気じゃあー」ってね・・・。あとは、抜糸これも痛いわよ。
 分娩台で痛くて腰を動かすと「動くと終わらないよ」って
 余裕の医者の顔が・・・でも逆なんだなぁー。「裂けた」方が
 治り早いし全然いいよー痛みないし、すぐ普通のイスに
 座れるし「切った」方がいつまでも痛いし、切った瞬間痛いし、
 治り遅いしね。よく「痔」の人が使うドーナッツ座布団。
 これがあっても座ると痛いのよね。」

だそうです。私は「裂けた」ことないんで、よくわかりません。
でも楽しい体験記ありがとうございました。長くなったので、
体験記の本題はまた明日。
では。


                              続く








☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
またまたきました読者の出産体験記。載せちゃいま〜す。

「陣痛室に居たアタシは微弱の為、一日余分に入院する事になり
「今日は産まれませんからご主 人はお帰りになって下さい」と
言われ、翌日陣痛促進剤をまたやる事になって、取りあえず寝
るか・・・と思ってスヤスヤ寝ていると地震があったの。ビック
リして目が覚めちゃって、眠れなくなってきたらトイレで「おし
るし」があって、夜明けに向かってだんだん陣痛が始まって・・・
夜になって入院して来た人が増えるに従って、陣痛も強くなって来る。
一時間おきぐらいに順番にお産が始まって、アタシは次に分娩台に
乗る・・乗ってみせる・・次に産むのはこのアタシだっ・・・と
思っていると、夜明けが来て、なんと5人抜きされちゃって
アタシが分娩台に乗ったのは午前9時。痛いし、苦しいし、
ダンナはわざわざ昨日会社を休んで夕方まで居てくれたのに、
夜中の3時から分娩台に乗る9時までの6時間、一人ぼっちで
苦しんだ さ〜。促進剤を使わないで自然に来た陣痛だったけど、
ダンナが居ればずーっと腰をさすってもらいたかったと思ったよ。
二人目ともなると、まあいっか・・・で終わっちゃうけどね。」

だそうです。
いろいろだよね。
そうそう、この体験記の題名は「5人抜きされた私」だそうで。
私も似たようなもんだったんで共感です。大変だよねぇ・・・。特に初産。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

第八十二話

PM2:30。
さっきから騒いでいた、経産婦さんが「お産」になるらしい。
ちなみにまだ騒いでる。

「いた−い、もういやぁ−−−−−!!」
「はい、もうお産するから、声出さないの!」
「だって痛いんだもん!!」
「赤ちゃんも苦しいの!」

どなりあいである。でも思ったの。
あんなに騒いでも「あれくらいしか怒られない」なら、
どうにもならなくなって、悲鳴あげても大丈夫かも、な−んてね。
痛い割には、変なとこ冷静に考えてたりして。

お産開始かぁ・・・。
いいなぁ・・・。
今思うと、この人「計画出産」だったのかも。
促進剤つかって産んだのかも。
確信はないけど。だって、ほんとに叫び続けてたから。
そんなに痛いってことは、私のこの「風船」と同じで、
ある意味「無理矢理」だから「痛い」の
かなぁ・・・って。

経産婦なのに。マジにうるさいくらい叫んでたもの、うん。

「はい、いきんで!口開けない!空気もれちゃうでしょ!」
「だってぇ・・・・」
「だってじゃないの!!!」
「はい、頭出た、もういきまないで!ハッハッハッハ・・・。」

オギャー・・・・
産まれた。

良かったね。良かったね。
なんだか人の出産で涙ぐむ私。
自分の時、どうなるんだろう。

そんなこと考えてる私でした。


                  続く

                          




*********************************
またまた来ました、読者の体験記。もしかして「クセ」になっちゃった?
5人抜きの彼女からです。

「陣痛の話、あたくしの5人抜きが載ってましたね。
 ふふ・・・今日は会陰切開の話でもしましょう。一人目の時は
 ウンウン苦しんでいると、いきなり「パチーーン」ってハサミで
 切ったような音がして「おおーっこれが会陰切開だーっ。
 切られちゃった、切られちゃった、どうしよう・・・」と
 ビックリおどおどしてました。
 二人目の時は助産婦さんが「あ〜もう二ヶ所も自然に裂けて
 来ちゃってますね〜。それじゃあ切開しちゃいましょう。」
 と言って、切られる瞬間「いったーーーーーい」と泣きが
 入っちゃいました。二人目は切り始めからわかっちゃったので、
 怖かったよ。産み終わってから先生が 切開した所を縫合
 している時もチクチクと、針を感じる痛みがあったの。
 それにしてもトイレが大変だよね。拭く時にしみちゃって痛いし、
 ウ○チの時は最悪だもんね。おまけに歩き方がペンギンみたいで
 ガニマタになるから、抜糸してない人はすぐわかるもんね。
 しかし、二回とも抜糸の後はウソの様に痛みがなかったのが
 とっても不思議でした。産後一ヶ月ぐらい違和感があったものの、
 あれから5年・・・今や触っても全くわからないほど、元に戻ったのが、
 ますます不思議です。女性の体は素晴らしいと思わない?
 こんな事に耐えられるなんてスゴイとしか思えない。
 男性では我慢できない体験をするから、女は強くなれるのよね。」

なるほど、そうかもしれませんね。
*********************************

第八十三話

看護婦さんには見えない人が入ってきた。
唐突に聞かれる。

「おやつ食べますか?」
「は?」
「だから、おやつの時間なんですけど・・・食べます?」

おやつ。
3時のおやつらしい。そんなのがあるのか!?お子様でもないのに・・・。
た・・・食べたいような、いらないような・・・。
でも痛くてそれどころではない。

「いいです、いりません。」
「そうですか。」

分娩台の人にも聞いてる。
「チーズケーキなんですけど・・・。」
「欲しいけど、食べられそうにありません。」

結局みんな断っていた。
みんなといっても、私を含めて3人の妊婦さんしかいないんだけど。
しかし、チーズケーキ?
凄いなぁ・・・。

後で聞いたところ、このケーキ。栃木の方からわざわざ入荷してるらしい。
めっちゃ美味しいんだって。

きーーーーーーーー
食べ損ねた。
それならゆっくりでも食べたのに!!

痛みは変わらず、気持ちだけが悪い方にいく。
ちきしょ−−−−−−−−。
なんでこんなに痛いんだ−−−−−!!
3倍だと−−−−−−−−!!
今頃サルのやつは、家でサルのくせに動物園の熊みたいに、
うろうろしてるんだ、きっと!!
電話の前をうろうろうろうろしてるんだ−−−−−−!!!

まだかな、まだかなって、にやにやしながら
電話をまってるんだ−−−−−−!!
ちきしょ−−−−−−−−!!
え−−−−−−−ん。
痛いよ−−−−−−−−−−−−!!!
おか−さ−ん・・・・。(←不思議なことに、何故かこう思っていました)
まだ風船抜けないし・・・・
いつになったら抜けるんだよ〜。

もう嫌だ!
産むもんか!
これ限りだ!!
こんなの2回もやりたくな−−−−−−い!!!

どうしてお母さんは、3回も産んでるんだ!!!(うちは3姉弟)
一度で沢山だ、こんな事!!!

そうだ。
もとはといえば、旦那だ!!
あいつがいたから、こんな痛い目に合うハメになったんだ。
ばかやろーーーーーーーーー!!

などと、まったくもう支離滅裂状態とは、このことをいうんだと思う。
そんな感じだった。

そしてPM4時。
手足の「しびれ」がはじまった。


                           続く

                          








***************************
体験記の感想・・・・いろいろ来るんだけど、声も顔も
知らない人からって、ちょっと不思議。
そして、嬉しいです。しかし、私の体験記は一体何人位が
読んでいるんだろう・・・・。
多分・・・・もうかぞえきれないんだろうなぁ・・・。
メールとかって、ちょっと怖いかも。
で、そのうれしい感想メールです。

「こんにちわっ。
 いつも楽しく出産体験記を読ませてもらってます。
 会社のお友達にも転送しているんですが、
 こんなメールが届きましたんで、転送しておきますね。

*またまたありがとう。
*この体験記、家ですごく評判が良いです。
*楽しみにしてるのは、私だけではないんですよ。

*まず、先週末に泊まりにきた妊娠中の姉が読み、
*その旦那が読み、コタツの上に置いておいたら、
*姪っ子1号(高校生)が読み、続いて、姪っ子
*2号(中学生)が読み、その姪っ子達の母(義姉)
*までもが読み終えてしまいました。皆、続きを
*楽しみにしてると話しております。まだ印刷した
*全部を読み終えていないのは私くらいなので、
*追いつかなきゃ。

*無事出産した際には、「おめでとう」のメールカードを
*出したいと思っています。」

どうもありがとうございます。
****************************

第八十四話

・・・・手足がしびれてる?
・・・なんで?
気づくと正座した時の状態。
それも手足。

おかしい。
????
どうして?

30分位もんもんとして、看護婦さんに聞く。

「あぁ・・・酸素の吸いすぎですね。」

!?
何それ?

「息を吐く方に、重点をおいて呼吸してみて下さい。」

吐く方に重点・・・・って。
???
でも仕方なくそうしてみる。
するとあら不思議。さっきまでの「しびれ」が消えていく。
ふぅん。
呼吸って難しい。

只今5:00。
まだ「風船」は抜ける気配なし。
「しびれ」のせいで、少し正気に戻る。
旦那をののしってたことを、少し気に掛ける余裕が出てきた。

3分おきの痛みは止まない。
かれこれ9時間。
痛いよ〜。
一体いつ、抜けるんだよ〜。

そこら辺で、やっと「赤ちゃんの苦しいんだ」と気づく。
痛みのないとき、お腹に話しかけることにした。
旦那をののしるよか、よっぽどよさそうだ。

前期破水で入った人がお産になった。
これで私が入室してから、3人出産というわけ。

PM6:20。
大騒ぎして産んだ人が部屋に行ったらしく、
私に分娩台に戻るように指示が出る。
簡易ベットから、ひーこらいいながらなんとかうつる。
先生の診察があり、やっと、やっと「風船」がとれた。

入れられてから実に、10時間後の事だった。

                        続く
  
                          





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感想メールです。

「出産体験記を楽しく楽しく怖いよーと思いつつ読ませていただいています。
 今度出産予定の友人が二人いて(11月と1月)、そーかあの子達もこういう
 経験をもうすぐするんだなあって。11月に出産予定の友達は、彼女自身
 ジャニーズジュニアのようで、母親になるような感じは全然しません。
 (本人も未だに自覚ないらしいです)お腹は全然目立たないし、あと3キロ
 以上太らないといけないそうです。1月の方は、お医者さんに「太らないで、
 痩せて」と言われたそうで・・・。確かに、彼女の方が今にも生まれそうな
 お腹でした。11月に出産する方が、あまりにも怖がっているので、
 上田さんのメールを見せてあげました。
 「この軽い方になるようにみんなで祈れー!」って。(^_^;)54話のことです。
 祈ります。あー本当に中学生が子供産むみたいな華奢さで、何だか
 かわいそうになってしまいます。旦那さんが老け顔の31才なので、
 親子のようです。「赤ちゃん生まれたら3世代だね」とは他の友人の感想。」

う・・・うらやましい・・・。太ってくださいだなんて・・・。
メールありがとうございます。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

第八十五話

PM6:20。
「風船」取りましょう!
先生がいったときは「神の言葉」かと思いました(笑)
ま、とにかく、5センチ開いた、という事です。

そして3分後、痛みが少し減りました。
3分の1かどうかは、さだかではありませんが。
でも「耐えられる」「痛み」に変わりました。
そんでもって、例の「分娩管理なんとか」もお腹に巻かれました。
横で、ジーコロコロと折れ線グラフを打ち出しています。
前回平坦なグラフだったのが嘘のよう。
陣痛のピークには、山のグラフが出来上がっています。

は−−−−。
一段落です。

余裕が出てきた私は、看護婦さんに質問。

「あの−・・・。」
「どうしました?」
「陣痛室、どうして使わないんですか?」

聞きたくてず−っと思ってたことです。

「産後の人がいっぱいで・・・つかってるんです。」
「あらら・・・。」

なんでも2日前に12人、昨日で8人産まれてるんだそうで。
満月だったのかなぁ・・・なんて思ったりする。
とにかく部屋が空いてなくて、急きょ入院部屋にしたらしい。
そうかぁ・・・、なるほどねぇ・・・。

「あとどれくらいですかねぇ・・・。」
「そうですね。見て上げましょうか?」

看護婦さん、指をつっこんで大きさを計る。
ちなみに先生もみんなこれで「計る」

「今6センチだから・・・・夜中かなぁ・・・・。」
「夜中!?」
「でなきゃ明け方か・・・・。」
「・・・・・。」

ものすごいショック。
いくら痛みが減ったとはいっても・・・・。
夜中まで、まだ耐えなきゃいけないなんて・・・・。
もしかしたら、明け方までかもしれないなんて・・・。
そんな・・・・。
そんな・・・・。
ひどすぎる〜。

泣きが入る。

でもそうだよね。48時間の人もいたんだもんなぁ・・・。
48時間・・・って3日間かい?
あらためて、母親学級の友達を尊敬してしまう。
こんなのに3日もかけたなんて。

そう思い始めた頃、またまた「耐えられない痛み」に変わる。
20回位の呼吸の8〜9回目に、どうにもならないくらいの
痛みが襲ってくる。思わず呼吸が止まり、いきんでしまう。

「駄目、まだいきみは駄目、早いよ。」

看護婦さんに注意されるが、陣痛の度にいきんでしまう。
そんでもって声まででちゃう。
駄目〜とか、いきんじゃうよ〜とか。
一体どうしたんだろう・・・・とか思った。

看護婦さんがまた見てくれる。
簡易ベットのときは、40分おき位にしか
見てくれなかったのにえらい違い。
見て貰うだけでもなんか落ち着く。
なにやらカルテに書き込む。
先生が来て内診する。

「上田さん、お産にしましょう。」

!?
何?!
なんだって!?

「準備して。」

先生看護婦さんに指示。
ちょ・・・ちょっとまて。
6センチの私がどうして「お産」に入れるんだ!?
え?!
おいってば!!!

私の疑問なんか全く無視のまま、分娩台の形が変わっていった。
どうやら「私が」「お産」になるらしい。

只今PM7:00ジャスト!


                     続く





                          
***********************
子宮口6センチでお産、というのを読んで、
二人目の時7センチでお産だったよ、というお話が
きました。

「初産なのに6センチでお産だなんて、それは大変でしたね
 アタシは7センチの段階で「この人経産婦さんなのでお産に
 なりま〜す」と言われました。
 まさかお腹の子供が4kgもあるとは、夢にも
 思わなかったんでしょうね。
 分娩台に1時間も乗るなんて・・・」

この方は体験記にも出てきてる方です。
4キロという赤ちゃんの体重でわかりますね(笑)
ま、生まれた後は笑い事ではなかったんですけど。
************************

第八十六話

PM7:10。

いきなり「お産」がはじまることになった。

人間ってなんていい加減なのかしら。
さっきまで痛くてどうにもならなかった「陣痛」が、
なんとか耐えられる痛みに変わっていた。
多分緊張から、痛みが消えたんだろうけど、不思議なものです。
産褥ショーツも脱ぎ、足を台に乗せて、さぁ「お産」開始です。

私の前に、すでに3人の人が「お産」を済ませていたんだけど、
大体「お産」開始から20分位で産まれてる。
3分おきの陣痛で、一回いきんで、それが2〜3回でおぎゃ−。
だから大体20分位。

よし、ということはあと20分位で産まれるんだ!
気合いが入る。

台の形が変わって、上半身が少し斜めになった。
腰のあたりにレバーが出てきて、それを握ってください、といわれる。
なるほど、力が入りそうだ。

7時30分頃かな、なんて悠長に待っていた。
その後に起こる事など、夢にも思わずに。

先生も来た。
看護婦さんも二人。
先生、真ん中。
看護婦さん、足の両脇。

「はい、じゃぁ説明しますね。」
「はい。」
「次の陣痛が来たら、その一番強い時にいきみます。」
「はい。」
「いきむ前に、大きく息をすって、止めて、そしていきみます。
 わかりますか?」
「はい、わかりました。」
「じゃぁ次の陣痛きたら、教えて下さい。」

ドキドキです。
あと30分もすれば、赤ちゃんとご対面。
うわ−−。
そんでもって来た来た来た、陣痛!!!

「来ました、陣痛。」
「はい、まだですよ、一番強い時のちょっと前に大きく息をすってね。」

私、大きく息をすう。

「はい、止めて。」

息を止める。

「はい、いきむ!思いっきり!!!」

レバーを握り、上半身少し浮かせて、いきむ。

「そうそう上手上手!」
「お尻の方に力入れて、まだやめない、もう少し続けて!」

かれこれ、20秒位いきんでいたんだろうか?
脱力・・・・。

「はぁはぁはぁ・・・」
「上手だよ、その調子であと3回位頑張ろう。」
「は、はい。」
「呼吸整えて。次もいくよ。」

気づくと、いきんでる間は、赤ちゃんの心音が聞こえないみたい。
いきみが終わると、ドッドッドッドッド・・・・っていってる。
赤ちゃん、頑張れ!
私も頑張るよ。

2回目の陣痛。
またいきむ。

「上手、上手、口開けないで!空気もれるから!」
「頭見えてきたよ〜。」

頭?!
わ−。
もうすぐなんだ〜。
とその時、隣の看護婦さんの声。

「先生、こちら心音聞こえません!」

それは、隣の妊婦さんの赤ちゃんの事だった。


                    続く


                          





※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
感想がきましたので載せますね。

「そっか「口も開けちゃいけないんだ」って初めて知ったけど。
 ・・・そういえばTVドラマとかでも歯をくいしばってるよね
 (納得!)あと、いきんでる時に「おかーさん」っていうの分
 かる気がするな。」

そうなんです。口あけちゃいけない、っていわれるんです。
他の病院はどうだかしらないけどね。
さてさていよいよ「お産」になりました。
しかし、まだ生まれません。困ったもんです。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

第八十七話

突然の事だった。
左隣の妊婦さんの赤ちゃん、心音が聞こえないという。
聞こえない、すなわち・・・・かなりやばいということ。

「上田さん、ちょっと待ってて。」

先生は、そういうなりそそくさと隣へ。
隣の診察してるらしい。

「○○さん、今日の当番誰?」
「××先生です。」
「大至急呼んで、二人がかりだ。すぐ出すよ。」

先生、看護婦さんに指示。
かなりやばいらしい。
先生は隣の妊婦さんに、状況説明をしている。
なんでも「へそのお」が首に巻き付いているらしい。
看護婦さん、内線で先生を呼んでいる。
もう一人の看護婦さんが、私にいう。

「上田さん、ちょっと一人で頑張ってね。」


なに?
!?
一人で頑張れ?
おい、私は「はじめて」なんだぞ。
経産婦じゃないんだぞ。
おい、おい、おいってば〜。

そうこうしてるうちに「陣痛」はやってくる。
えっとぉ、大きく息をすって・・・

とはいえ、一人ではこころもとない。
なんとか乗り切るんだけど、これでいいのかわからない。
泣きたくなってくる。
隣の妊婦さんが、先に出産することには文句はない。
隣の妊婦さんは子宮口8センチとかいってたから、
もともと私より先なんだろうなぁ・・・って思ってたから。
でもでも、この状況はひどすぎる。

なんで一人で頑張らなきゃいけないの?
すくなくとも私の前3人は、こんなことなかったぞ〜。
一人くらい看護婦さん、残ってくれてもよくない?
みんな3回くらいの「いきみ」で生まれてたじゃない。
私これで何度目のいきみ?
なんかいいかげんになっていく。
陣痛がきても、テキトーにしか「いきまない」。
というよりいきめない。

なんで?どうして?
どうして私ばっかり、こんな目にあうんだろう。
ババひく女なんだろう、いつでも・・・。

こんなことばっかり、頭をよぎる。

そうこうしてるうちにお隣誕生。
PM7:37。

赤ちゃんは、なんとか産声をあげた。
多分たたいていた、と思う。

結局私の前に、4人が出産した。
とうとうこの部屋で、うんうんいってるのは私一人。
お産が終わったから、先生きてくれるのかな、
なんて思ったら大間違い。
恐怖の「会陰切開」の跡を、縫っている。
縫いながら、今のお産のコメントを述べている。
おいおいおいおい。

看護婦さんは、私がいきんでると、またの向こうから、
ひょいっと覗き込んで一言いっていく。

「はい、上田さん上手よ、頭見えてきてるからね。」

なぐさめにもならない。
せめて脇に立って言ってよ!
横切るときに覗き込んで言われたって、うれしくないよ!
分娩管理なんとかが、赤ちゃんの心音を刻んでいる。

ただひたすら・・・
ただひたすら孤独だった。

人間死ぬときは一人だ。
生まれてくるときは、母と共に苦しみながらだけど・・・
「自力」で生まれてくる。
結局人間は一人なんだ・・・・とか、
わけのわからないことまで思っていた。

先生が、再び私の元にやってきたのは7時50分過ぎ。
かれこれ30分間の一人旅だった。

PM7:50。
お産の「やりなおし」が始まる。


                    続く









                          
*************************
またまた感想です。

「八十七話の体験記読みました。なんだかいろんな事が
 あったんだね。よその人の出産を間近で何度も聞けるって
 いうのはすごいね。ここまでくると二人目も読んで
 みたくなった。きつかったんだろうけど
 「 −人間って孤独さ− 」っていうのは笑っちゃいました。」

笑い事じゃなかったんだってば。
30分もほったらかしだったんだぞ〜(笑)
10時間以上苦しんでさ、やっと生まれると思ったら、
先生も看護婦さんもいっちゃって・・・
心ぼそさと自分の運のなさに涙が出たよ。
こんな体験してる人なかなかいないと思うなぁ・・・。

「こんにちは。
 ・・・一人で頑張るって?
 一人にされちゃうんですかー?
 ええええええーーーっ?!
 産んでいる最中に独りぼっちってすごいですね。
 看護婦さん一人くらい残してくれたって良い
 じゃないですかねえ。
 分娩台に乗っても油断できないですね。
 世の中って恐ろしいです。」

ほんとだよね。もう!!!!
***************************

第八十八話

PM7:50過ぎ・・・。
しきり直しであります。

さて頑張ろう!といわれて、うんしょ!といきむ。
上手、とほめられながら、お尻あげない!
等と注文されながらも懸命にいきむ、いきむ、いきむ。

赤ちゃんの心音が聞こえない。
?いきみが終わっても聞こえない。
まさか私の赤ちゃんも・・・・
看護婦さんが、天井から酸素マスクを取り出した。

「赤ちゃんに酸素送って上げて。いっぱい今のうちに吸って。」
「あの・・・赤ちゃん・・・」
「大丈夫、産道に入ったから聞こえないのよ。もうすぐだから。」

先生きてから2度目のいきみ時、先生がハサミを持ったのがわかった。
ってことは・・・次?例のあれ・・・。

次のいきみの時、会陰切開・・・・!
こわいよ〜。私も気づかなきゃいいのに、変なとこに気づく。
果たして次の陣痛の時・・・・

「はい、いきむ!」

看護婦さんのかけ声と共に、いきむ。
パチン!
いて!

「ん−−−−−−−−−−!」

いきんでるので、「いて」なんて発してないけど、
気持ち的には「いて!」って感じ。
なんだ、こんなもんか。
陣痛が去り、呼吸を整えていると先生が言う。

「次で産むよ、いいね。」
「は・はい。」

次で?ほんとに?
そして、きた次の陣痛。

「ん−−−−−−−−。」

右側にいた看護婦さんが、先生の指示でお腹を押す。
おいおい、そんな乱暴な・・・・。
馬乗りになって、押される人もいるらしいから、まだいいか。
次の瞬間。

「はい、頭がでたよ〜。」
「もういきまない!」

え?頭でた?

「ハッハッハッハッハ・・・」

看護婦さん二人でハッハッハ・・・といってる。
そんなこといわれても・・・
と思いながらも、できるだけそれに合わせて
ハッハッハッハ・・・・

ズルン。


何かが股の間を、まさに「ズルン」と出た。
そのとたん・・・・
オギャー・・・・・!

生まれた・・・・。

赤ちゃん・・・出てきた!

お腹をさわるとぺちゃんこになってる!

私の赤ちゃん!

PM8:08。
待望の赤ちゃん誕生であります。


                 続く








※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
生まれました。いやぁ、やっとです。
去年の10月19日にはじめた「出産体験記」。
偶然にも4月19日。ちょうど6ヶ月。おおっ半年も頑張って
連載してたんですねぇ・・・。載せたのは20日だけど、打ち
終わったのは19日なの。偶然といえば、午後8時8分に生ま
れたんだけど、八十八話で生まれるってのも、なんかの縁なん
でしょうか。おばあちゃんにいわせると、8の数字がらみは
「お不動さんに守られてるんだ」だそうで。

「こんにちは。とうとう生まれましたねー。
 おめでとうございます。本当はもう大きくなっているお子
 さんのはずだけど、読み手としては今生まれた感覚ですね。
 無事に育って欲しいなって思ってしまいます。
 今の職場の同期で、最近第2子が誕生した人がいます。産
 んだのは奥さんですけど。今回は帝王切開だったんですって。
 普通分娩も痛そうですけど、帝王切開も・・・。卵みたいに
 産めたらいいですよね。私の母は子供2人とも帝王切開でし
 たが。高齢出産だったので。帝王切開って決まっていると、
 予定日より2週間以上早く出しちゃうのは、今も昔も変わら
 ないようで。(私も12月に生まれるはずだったのに11月
 半ばに出されましたから)赤ちゃんが下りてくる前じゃない
 と駄目だからだそうですが、妹の場合は、かなりぎりぎりま
 で頑張れたそうです。「普通下りてくる赤ちゃんが上って
 いったから」生まれる前からあまのじゃくな。さすが我が妹。
 つわりは全然なかったけど、生まれる直前に胃を蹴られ
 まくって気持ち悪かったそうです。(^_^;)それではまた。」

産まれたけれど、まだまだ続きます、体験記。ババ引く女、上田さん。
まだまだ引きまくるんです、ババを・・・。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

第八十九話

PM8時8分。
オギャーという元気な声と共に、やっと赤ちゃん誕生。
看護婦さん、酸素マスクをはずしてくれる。

「ありがとうございました。」

私しっかりお礼を述べる。
過去4人の出産を聞いていて学習した通り。

「うんうん、元気な女の赤ちゃんですよ。」

「え・・・女の子です・・・か?」
「そう、女の子ですよ。」
「あ、いや、ありがとうございます。女の子ですか・・・。」

うわ-。女の子だよ、どうすんだろ。
旦那はもう100パーセント男と信じてたし、
私も洗脳されてたからものすごくびっくり。
そして拍子抜けした。
でも思った。
豊蔵は免れたぞ、っと。

そうこうしてるうちに、先生はなにやら引っ張っている。
再びズルンと何か固まりが出た。
胎盤らしい。先生が引っ張って出していた。
いやぁ、気持ちいいくらい「ズルン」と出た。

赤ちゃんは産湯に使った後、私のところに再びやってきた。
きれいな赤ちゃんである。
でもつぶったお目目が黄色いので何事?と思う。
ぎょっとしてる私に、看護婦さんが説明してくれた。

「今、目薬さしたから、黄色なのはその色ね。」

聞かなきゃ、ちょうどつぶった目のところが
黄色なので「妖怪」みたい.。
目薬か、なるほど。

「上田さん、赤ちゃんね、3090gでした。」

先生がそういった。
3090・・・・。3キロ・・・。
ちっちゃい、ちっちゃい赤ちゃん。
ほんの、今ちょっと前まで、お腹の中にいたなんて。
これからよろしくね。

「もういいですか?」

と、看護婦さんが赤ちゃんを連れて行く。
いいさ、今日からず-っと一緒だしね。
胎盤の重さとかを計っていた。
分娩台はまた慌しく形が変わる。

「上田さん、感染予防の注射しますね。」
「は、はい。」

看護婦さんが、右手に注射を打つ。
と同時に、あそこにも痛みが走る。
気づくと先生が、麻酔の注射を打っている。

「切った部分を縫うんで、麻酔打ちましたよ。」

ほぼ同時の作業である。
こっちは右手に意識が集中している。
うまい作戦だ、と思う。
注射のあとは熱を測られる。
産んでからもいろいろあるのねぇ・・・。
そんなことを思っていた私だった。


                続く

                          




第九十話

先生は、あそこを縫いはじめたようだ。
隣の人に言っていたように、私にも話をはじめた。
どうやらこの先生は縫ってるときに「話」をするらしい。

「長かったですね、でも最初ですから。」
「はい。」
「2回目はそうでもないと思いますよ。」
「そうですか。そうだといいです。」
「80点位かな、まぁいいお産だったと思います。」
「ありがとうございます。」

確かこんな会話したと思う。
看護婦さんが、飲み物を持ってきてくれた。

「どっちがいいですか?」

ウーロン茶とオレンジジュースだった。
もちろんウーロン茶にした。オレンジだとまた喉がかわくから。
看護婦さんは、自宅の電話番号を私から聞き、電話を掛けている。

「 上田さんのお宅でしょうか。こちらS市の山王クリニックと
 申します。おめでとうございます。午後8時8分に五体満足で
 3090グラムの女の赤ちゃんが、お生まれになりました。
 本日の面会時間は終了してしまいましたので、明日お越し下さ
 い。本日お生まれになりましたので、明日は9時から面会できますから。」

確かこんな事を言っていた。

「旦那様が出ましたよ。」

受話器を受取り、話す。

「女の子だったよ。」
「うん、聞いた。」
「・・・・。」
「お疲れ。大丈夫?」
「うん。明日来る?」
「行くよ。」
「実家に電話しておいて。」
「わかった。」
「じゃ明日ね。」
「9時からOKなんだよな?」
「うん。そうだって。」

さぞかし驚いたんだろうなぁ・・「女の子」に。
もう「ぼーっ」とした感じだったもの。
電話を切って、看護婦さんに渡す。

後日談だが・・・・。
旦那はかなりショックだったらしい。
電話が終わったあと、お姑さんと、義妹はもちろん聞く。

「生まれたの!どっちだって?!」
「女の子だって・・・。男じゃなかった・・・。」

旦那はがっかりした様子で答えたらしい。
そこでお姑さん、反論。

「何言ってるんだい!五体満足ならいいじゃないか。
 五体満足なんだろ?!え?!」
「・・・・。」
「どうなんだい!?」
「・・・そういってたような・・・・。」

どうやら女の子ショックで、その後の事は記憶されてなかった
らしい。しっかり「五体満足」と「3090g」という言葉は
いってたのに。困った旦那である。もうパパになったというのに。

ともあれ、私の方は順調に縫合も済み、やたらとグルグルお腹に
巻かれ、台の上で2時間安静という状況をむかえる。
と、看護婦さんがいう。

「おしっこ、とっておきますね。」

「取る・・・って?」
「これで、ちょっと痛いですよ。」

看護婦さん、細い管を見せてくれる。
いて!

導尿初体験。気持ちのいいもんではない。
看護婦さんは、ビニールに尿をとって、またまた計っていた。
管をつけるときと、取るときが痛い。
まったく、出産っていろいろあるのねぇ・・・・。
そんなことを思っている私だった。


                      
続く

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