**** はじめに ****
この体験記は、はじめ会社の掲示板に掲載されていました。
ところどころ、社内でしかわからない部分があるかもしれませんが
楽しく?読んで下さいませ。感想等は、随時お待ちしています。
第一話
平成6年7月・・・・
「28才位で、一人産みたいねぇ・・・・」
と、以前から言っていた私。
5月生まれが育てやすいと聞き、逆算していつ頃だと5月に生まれるんだ?
と考えていました。
ちょうどその頃、私の主宰する劇団の公演もあり、そのあとの8月頃だね、
と旦那に話しをしたのでした。が、しかし、旦那が
「さぁつくりましょう、はいできました、なんてうまくいくわけないだろ!」
といいまくり、7月から子供つくろう!という。
おいおい・・・・。でもまぁ一理ある、と同意したのがいけなかった。
7月後半。
公演の前とはいえ、熱っぽい。
風邪じゃない。
どうも本調子ではない。
できた? え?
今だと4月うまれじゃん!!5月生まれは?!!!
確かめようにも、よく言うように、あれが2週間位遅れないと駄目らしいし・・・・
なにより、目先の公演の方が優先。
そして当日、舞台セットを見てびびる私がいました。
公演を観にきていただいた方は、覚えていらしゃいますか?
奥の方が高くて、スロープになっていて、そこを降りるようになっていたんです。
このスロープが、結構急なんです。稽古中も何人か滑って転んでいました。
もし・・・・転んで、なにかあったら・・・・・
なにより、本番中に・・・・ヒールはいて降りるシーンがあるのに・・・・
ひょぇ−−−っ!
考えるだけで恐ろしい。
まだ未確認物体の為に、冷や汗かきながら、公演にのぞんだ
上田さんだったのでした。
続く
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感想メールです。ありがとう。うれし−。
「おもしろいばい。〜体験記。やっぱ、文才が有る人は違う。
おいは、男やけん、読んでもなぁ。とか思いよったとい。
読んだら、続きば、読みとおなると。続きもよませて。
あん時の舞台のスロープ。狭いだけに急やったもんねぇ。
おいもこけとろうが。そんで、のぼるんがまた、結構きついと。
ようおぼえとうなつかしかねぇ。
あ、読みにくいて、この博多弁?
じゃったら、標準語変換で、書かないかん。」
これからもよろしくね。
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第二話
公演終了・・・・そして8月。
もう少ししたら、未確認物体の確認に病院いかなきゃな、
と思いつつ・・・・
どこの病院にしようか・・・。
病院。産婦人科。
基本的に行き慣れない場所だし。
評判の悪いところも嫌だし・・・う〜ん。
旦那様は、以前営業をしていて、良く聞いた「評判のいい病院」が、
S町の「山王クリニック」という病院だった。
理由を問えば、
「なんでもメシが、美味いらしいぜ。」
とのたまう。
「メシより腕でしょう!」
と私。
「妊娠・出産なんか病気じゃないんだよ。俺なんか産婆さんに
取り上げてもらったんだぞ。それより、入院中のメシ気にした方がいいじゃん。」
と旦那様。
なるほど。そうだよね。悪い噂は聞かない病院なら、ま、いっか。
そんな感じで、簡単に病院を決めてしまう私。
後になって、食事が美味しいことが、えらい救いになるのだが、
それはまたその時に。
で、病院も決まった。いつ行こう?
私は(当時)ペーパードライバーだから、旦那様に連れていって
もらわないと行けない。
病院にTELして聞くと、土日もやっているという。う〜ん。
そうこういっているうちに、お盆休みになっちゃった。
旦那様の実家に遊びにいって、二泊して帰宅。
「今日やってればなぁ・・・」
なにげに言った私の一言に、旦那様が反応。
「行こうっ!TELしてみなっ!やってたら行こうっ!」
そして10分後。
未確認物体を確認すべく、私達は車に乗って、まだ見ぬ病院めざして
走り出していたのでした。
続く
第三話
S町。
Sクリニックなる病院は、まわりになにもない、
えらくへんぴな所にポツンと建っていた。
白い外壁は、遠くからもよく見える。
どきどきしながら受付。内装もいい感じで、嫌な感じはしなかった。
上田さんの場合の「嫌な感じ」っていうのは2種類。
一つは言わずとしれた、病院の雰囲気。
もう一つは、知っている人だけ気づいてね。
ま、そんなこんなで、気に入ったな、と思いながらロビーに座る。
ロビーには、へちゃむくれた赤ちゃんやら、やたらと
目の大きい赤ちゃん等の写真が、パネルにいれられて
飾られていた。×月×日◯時◯分と書いてある紙と
一緒に写っている。私の子供も、産まれたらこうやって
みんなが見るのかなぁ・・・なんて思ってみたりして。
これは第一子、今まさに確認しようとしているお腹の子供では、
かなわないことなのですが。
脇にあった雑誌を一冊手にとった。
ベビー用品のカタログで、’ご自由にお持ち下さい’とある。
なんか、産婦人科だなぁ・・・としみじみ思う。
旦那様は、思った以上に男性が多いのにびっくりしていた。
「こんなへんぴなとこじゃ、運転出来る人じゃなきゃ、
旦那さんと来るしかないじゃん。」
と、私。
「まぁ、そりゃそうだ。」
と旦那様。
「旦那様」はやめようと思った。
ここからは「旦那」。うん「様」はいらないや。
「上田さん、上田みつ子さん、××までおこしくだいさい」
と、アナウンスが入る。
「ちょっと行って来るね。」
と旦那に言って、席を立つ。
呼ばれたところで、看護婦さんが冷たく言う。
「そこのトイレでお小水をとって下さい。
トイレに行けば分かりますからっ!」
私、むっとする。
なんだこの人。
そんな言い方しなくたっていいじゃないかっ!
なんだなんだなんだっ!
さっきまでのいい気分が吹っ飛んだ言い方だった。
よっぽど気に入らない事があったんだろう。
でも、こっちに当たることはないじゃないかっ!
と、心の中で思いながら、事を済ましロビーへ。
しばらくして、またアナウンスで呼ばれる。
さっきとは違う看護婦さんが
「お小水とって下さい。」
と同じ事をいう。
「もう指示があって、取りましたけど。」
と私。
「え?でも・・・・」
看護婦さんはとまどって何かをはじめた。そして言った。
「血圧と体重を計ってませんよね?」
「そんなこと言われてないので分かりません。」
と私。少々むっとしていた、と思う。
「え?あれ?」
とまた看護婦さん。おいおいおい、段取り悪いよっ!と心の中の私。
「すいません。ここで計るんです。」
そしてやっと、ちゃんと段取りを教えてもらう。
まず、来院したら受付を済ませ、トイレでお小水をとって、
血圧と体重を計り提出する。そしてロビーで待つ。
これがなされないと、いくら早い番号で受け付けしても無駄らしい。
早く言え!って感じ。
計量して、またロビーへ。
「終わった?」
と旦那。
「まだだよ。これからが本番だよ。」
気分を害された私は、むっとしたまま腰掛けた。
さっきまでの「いい気分」は、もう、どこにもなかった。
続く
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感想メールです。
「体験記!うんうん!
上田とみつ子さんの顔が、態度が、浮かぶ!(笑!!!!)
セリフが、口調が、聞こえてくるよ。
なんか、おれも、入院したときのこと思い出したりして。なんか、
病院の空気まで想像できたよ。看護婦って機嫌悪いとすごいから
ねぇ。俺も、独協病院いくまえに、順番待ち入院させれれたとこが、
なんか、いままで、付添婦って言うの?なんかそういうのを一気に
シャットアウトしたばっかで、看護婦さんたちすげー忙しそうで…。
独協病院いったのは4月の終わりだったんで、新米看護婦さんが
たくさんいて、研修生もたくさんいて、みんな、つとめて良い顔
してたし、先輩看護婦も、つとめて、丁寧に接してくれてたけど。
病院の雰囲気って、看護婦さんにかかってるよね。やっぱ。
っと、話が脇道に逸れたけど、なんか、美味しいとこで、「続く」
って、じれったぁぁぁい。はよ続かいて。あ、でも、台本優先だよ
なぁ。やっぱ。」
ドキ!台本ですか。がっ、頑張ります・・・。
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第四話
これからが本番・・・・自分で言ってて、少し怖かった。
アナウンスで、1・2番診察室の前でお待ち下さい、と言われ、
1.2番診察室を探し、前の椅子に座る。
まわりは、あたりまえの事だが、こっちは女性ばっかり。
妊婦雑誌を読んでる人、子供の世話をしながら番を待つ人、様々である。
そうこうしているうちに、やっと2番診察室でよばれ、入室する。
「2週間位遅れてるんですね。」
「はい。」
「わかるかなぁ・・・まぁ内診してみましょう。
そっちで準備して下さい。」
内診・準備・・・・はははは・・・どきどきが高まる。
看護婦さんが来て、
「はい、脱いだ物はその籠にいれて下さい。
準備ができたら、台に乗って下さい。」
と、たんたんという。
こっちはどきどきだというのにっ!!!
むこうは毎日毎日、腐るほど言ってるセリフなんだろうけどね。
「足ここにのせて、はいもう少し前に。はい、いいです。」
けっこうな格好である。こんな時、地震が来たら逃げられないな、と思う。
どきどきのくせに妙に冷静な私だ。
「先生、準備できました。」
看護婦さんの合図に、2番診察室で診察していた先生がやって来る。
1番と2番はドアこそ違えど部屋は一つで、真ん中に2つの診察台。
もちろんカーテンでしきられている。
でも声は聞こえるから、聞く気になれば筒抜けである。
両はじにお話する机と、簡易ベッドがあるようだ。
私の準備中に、隣の妊婦さんとお話をしていたらしい。
なかなか有効に時間をつかってるなぁ、と思う。
足にかかっていたタオルを先生がとり、内診。
「はい、力抜いて下さい。」
って、そんなうまくいくかって!
こっちは緊張しまくってるってのにっ!!!
「あぁ・・・うん妊娠してるな。してますね。」
と先生。
普通、こんな格好で妊娠告げるか?
でも冷静に返事をする私。
「してますか?」
「してますね。見られるかな。ちょっとまって。」
と、なにやらごそごそ先生やってる。
「はい、力抜いて下さい。」
ってなにしてんのよっっ!!!!!
内診・・・って、指で触診したりするんだけど、
これは完全に指じゃない!
何いれたの?! そんなとこにっっ!!!!
きゃぁ−−−−−−っ!!!
「あぁ見える、見えますよ。ここ。わかるかな。」
と先生。
私の冷静さはどこかに吹っ飛んでいました。
「は?」
カーテンをずらして、小さなモニターが現れた。
そこに黒い固まりが映ってる。なんだこれ?
一気に冷静になる私。気持ちの切替の早いこと。
芝居やってるせいかしら。
「この黒い固まりが子宮です。で、この小さい点が赤ちゃん。」
「えっ!!!!?」
それは・・・
それは本当に、小さい点。
0.5ミリ四方位の丸い点。これが赤ちゃん?
未確認物体の確認の瞬間である。
うわぁ−−−−っ! すご−−−いっ!
あれ?中で何か点滅してる。何これ?
「点滅してるのは心臓だよ。もう動いてるね。」
すごい。
こんなに鮮明に見えるもんなの?
すっごい。
感動であります。
「はぁ・・・」
間の抜けた返事。
私ったら、感動でぽ−っとしてしまっていました。
「はい、じゃおしまい。」
えっ? もうおわり?
もう少し眺めていたかったけど、おしまいといわれたら仕方がない。
台から降りて衣服を整えて、また、先生の机の前へ座る。
「妊娠してます。一応、今現在の予定日は4月9日です。」
あれ?「おめでとうごさいます」は? ないの?
私がとまどっていると先生が続ける。
「産みますか?」
は? 何言ってんのこの人。
私、また、むっとしてきた。
なんなんだ、この病院はっ!!!
「産みますよ。」
喧嘩腰である。喧嘩うったのはそっちだっ!!
「体重増やさないようにして下さい。あなたの場合、
1キロも増やしちゃ駄目ですね。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
な・・・な・・・・
な・なに〜〜〜〜っ!!!
1キロも増やすなだってっ!?
妊婦って10キロ位増やしてもいいんじゃないの−−−−−−−−っ!!!?
えぇ−−−−−−−−っ!?
ちょっとまってよ−−−−−−−−−−−−!!!
続く
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感想メールです。
「へぇぇぇ。妊婦は子供の分も食わにゃあならんとばっか
思っとった。…あ、体験記四話読ませていただきました!
やっぱ、お産に最適な体重ってぇか、体ってぇのがあるんだね。
くって、体力有ればいいんかと思った。
ちっと、生々しいんで(なんかスプラッタな画が浮かんで
しまう…)、コメントは控えめにして…。続きまってるよ!
……あっ、でも台本優先でね。(仕事優先と言わんところが…)」
はい、頑張ります。
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第五話
「体重は1キロも増えないようにして下さい。」
死刑判決のような気がした。(ちょっとオーバーかな)
「え・・・でもよく・・・あの・・・妊婦は増えるって言いますよね?」
すでに負け腰。喧嘩は完全に私の負け。
「それは、お産に耐えられるように、です。あなたの場合は、
充分でしょう。いいですね。増やしちゃ駄目ですよ。これ以上増えたら、
妊娠中毒症とか引き起こして、大変な事になりますよ。塩分は控えめに。」
妊娠中毒症?
何それ?
塩分控えめ?
もしかして、妊婦って大変かも。(今頃気づいても、もう遅い)
別に体重、増えたい訳でない。増えないで済むなら、
それに越したことはないけど・・・
もう、頭の中はパニック状態。
先生、たんたんと続ける。
「それでですね、まだ赤ちゃんは安定していませんから、
2週間後にまた来て下さい。あと正確な予定日は、今は
「赤ちゃんの大きさ」で決めるんです。そのころにまた、
お知らせいたします。ではまた2週間後に。」
頭の中はぐるぐる渦巻き。とぼとぼと旦那のもとへ。
新聞を片手に、ひょいっと私に気づき一言。
「どうだった?いた?」
「うん。いた。丸いの。」
「ふうん。そう。」
↑感動のおめでた発覚の会話。なんなんだろう、この夫婦。
旦那の態度に拍子抜けした私は、イスに座るなり言った。
「体重増えちゃ駄目なんだって。」
「増やさなきゃいいじゃん。」
簡単にいうなっ!!!
ちなみにこの旦那。食べても食べても太りません。
どんなに食べても40キロ台という驚異の人。
騎手になれば良かった、と最近競馬にはまっている旦那はいう。
その通りだと思う。
私はといえば、食べれば食べただけ、身になるという人(泣)
「よく10キロ位増えていいっていうけど、嘘なんだね。」
「おまえは元があるからだろ?違うの?」
旦那鋭いっ!!!
あーぁ。
結婚前の体重なら10キロ増えても怒られなかったかも・・・
なんて不可能な事を仮定したりして。
とにかく、妊娠してしまったのだから、ダイエットはもう出来ない。
増えないように毎日チェックして、公演前のように
気合い入れて体重管理だっ!!!
と心に誓うのでした。
とはいえ、実は「つわり」でいくらか痩せるだろう
とたかをくくっていたのでした。
私の母もいとこも、近親者はみんな「つわり」で5キロ以上痩せていました。
吐いてばかりいるので、トイレの前から動けないとか、「つわり」で
会社をやめたとか。そんな友人ばっかりだったんで、イメージが
「痩せる」になっても当然でしょ?
仕事にならないのは困るけど、痩せられるなら・・・・
「つわり」で体重が減れば、少し増えても今の体重位で押さえられるかも・・・
と夢見ていた訳。
でも、これは本当に夢で終わるのでした。
なぜなら、私には「つわり」で「はく」という行為は、
一度も訪れないのだから。
「母子手帳・・・・」
会計を終えて、帰路についた車の中で、私はぽつりといった。
「市役所かなぁ。どこでもらうんだろう。まだ時間あるからいってみようよ。
有給つかって休む より、いいじゃん。」
「お盆だよ。やってねぇよ。」
「行くだけ、行ってみようってば。」
面倒くさがってる旦那に、S市役所にむけて運転するように、頼み込む私でした。
続く
****************************
感想メールです。
「えっと、感動のおめでた発覚シーン…。
なんか、「やっぱ上田夫妻だよ。」って気がした。
上田の方は、何と言っていいかとかまぁ、とにかくいろんな事を
頭の中で回転しとるのか 表面上は、淡々と…。みつ子さんは
診察での先生とのやり取りで受けたダメージで、やっぱり淡々と…。
でも、あとになって、笑い話にしながらも「もっとこう」とか
いいながら、理想をかたりそうだねぇ。
久しく、みつ子さんの文書に接してなかったから…なんか、
独特の味があるね。(どうも、近頃食い道楽のせいもあってか
「読み味」なんちゅう表現をつかうようになった)
でも、毎日書いてるの?大変くない?台本も書いてよ?
でも、まぁ、リフレッシュってか、楽しみで書いてるんだったら
いいけど。おいらが、催促してるせいで、毎日慌てて書いてるとか
だったらわるいし。(でも、続たのしみにしてたりして…。)
まぁ、がんばろう。お互い。」
大丈夫。楽しんでます。台本・・・?何それ(←現実逃避)
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第六話
S市役所の受付で「母子手帳」はここではないことを聞く。
保健センターに行って下さい、といわれ役所を出た。
車に戻って、車の中で待っていた旦那に聞く。
「保健センターって知ってる?」
「知ってる。」
「そこでもらうんだって。」
「行くの?」
「行くの!」
かなり面倒くさがっていたが、旦那は車を走らせてくれた。
私は保健センターが、何処にあるかさえ知らなかった。
まぁ、今まで「用」がなかったんだからしょうがない。
廻りは田んぼ。建物が一つ。
「あれだと思う。」
と旦那。
「あれかぁ・・・」
と私。
駐車場に車を止めて、今度は俺も行く、と一緒に玄関に入る。
「あの−・・・母子手帳もらいに来たんですけど・・・」
「はい。母子手帳ですか?おめでとうございます。」
おおっ!はじめて言われた!「おめでとうございます」!!!
なんか妊娠したんだなぁ・・・と実感する。
「病院からの証明書ございますか?」
「は?」
なんでも、病院から「証明書」なるものをもらわないといけないらしい。
そんな話一言も聞いてないぞ。
「あの・・もらってないと駄目なんですか?」
「いいえ、でも予定日とかねぇ・・・」
「あっ!それなら4月9日って・・・」
「あら、分かるならいいですよ。この用紙に記入して下さい。」
と、早速、住所・氏名・年齢・第何子・予定日などを記入する。
「母親学級は希望しますか?」
「そうですね。初めてなんで・・・」
「来年4月なら・・・11月からのでいいかな。」
「はい。お願いします。」
なんか妊婦の実感わきまくり、であります。
「じゃあ、これ、お暇なときに読んで下さい。
それでこれが母子手帳になります。11月からの母親学級は
ここでやりますからね。お大事に。」
じーーーーーーーーん。
感動。なんかやっと「妊婦さん」扱いされた!!!
なにやらごっそり小冊子をもらう。紙袋一杯に入ってる。
なにより「母子手帳」を手にして、ふふっとほほえんでしまう私。
はたからみてたら変だったろうなぁ・・・
車に戻って、旦那が一言。
「何、にやにやしてるんだよ。」
「いいじゃん。なんかうれしいんだもん。」
「おまえ、ここまで自転車で来るんだぞ。道覚えとけよ。」
「あ、そうか。」
母親学級、ここでやるっていってたな。
覚えなきゃ・・・って・・・あれ、ここどこ?
時すでに遅く、私は第一回母親学級のとき、
しっかり道に迷うのでありました。
困ったもんである。
続く
*****************************
なんだかもう「7」です。ぼちぼち反響があってうれしいです。
でも「出産体験記」というより「妊婦生活」が主になってます
けどねぇ・・・。タイトル変えようかな・・・
なんて思ってる今日この頃です。
ま、いっか。
なにより4年以上前のこと。思い出しながら、原稿もなしに打って
いるので、時々変なところがあるかもしれません。
そこんとこは大きい心で読んでね。
まぁ、出産のその日まで、気長にお待ち下さい。
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第七話
家に帰り、早速紙袋をあけてみる。
妊婦の生活やら妊婦体操やら、いろいろある。
早速一冊取り出し、読み始める。
すぐに目に付いたのが「妊娠中毒症」
そういえば先生もいってたな・・・と、真剣に読む。
妊娠中毒症がどんなものかは、ここではあえてふれません。
女性の方は、ご自分が妊娠したら読んでみて、気をつけて下さい。
男性の方は、奥様がもしくは娘さんが妊娠したときにでも、
勉強して下さい。こんなとこでこういう症状です、なんて書いても、
関わりないことって覚えてないもんだし、ね。
一通りよんでみて、妊婦は大変・・・と実感。
毎日の生活、気をつけなきゃ・・・
明日からの、電車通勤も気をつけなきゃ。あれが一番怖いかも。
朝のT駅の階段。人の波・波・波・・・・
今はいいけど、大きいお腹であの人混み・・・
かき分けられるのかなぁ・・・
少し不安がよぎる。
ま、なんとかなるって。うん。←こういうやつです。私って。
旦那がいう。
「親にいう?」
「言った方がいいんじゃない?」
「まだいっか?」
「面倒なんでしょ?」
「・・・・」
「夕食後でいいよ。ご飯の仕度しなきゃ。あとタバコは今日からベランダね。」
むっとした旦那を後目に、私は台所にたった。
当時、旦那はダバコを吸っていた。かなり重症な中毒患者
(凄い表現かも)だった。
何度、やめさせようと思ったかしれない。
でもいつも隠れて吸いだし、最後は開き直って目の前で吸い出す。
何回繰り返したか分からない。
結局は自分で「やめよう!」と思わない限り、やめるのは無理な事なんだろう。
夕食後・・・・・早速旦那の親と、私の親に電話する。
「おかしいって、言ってたのよ。昨日泊まったとき、お酒飲まなかったでしょ。」
といったのは旦那の親。
「4月?そんなに早いの?ええ?」
といったのは私の親。
まぁとにかく身体に気をつけて、と双方から言われた。
気をつけますとも。でも病気じゃないから、疲れないように、程度にね。
電話終了後「母子手帳」を開き、記入をはじめた。
母子手帳の公布日は平成6年8月16日。
お腹の子供が、はっきりこの世にいると分かった日である。
続く
***************************
感想メールです。
「体験記も7話まできましたねぇ〜♪妊娠中毒症かぁ〜
どんなんやろ?
私も妊娠した時にはしっかり勉強しよっと♪
このところ^^毎日体験記が気になって×2(笑)
毎日楽しみにてるでぇ〜♪(*^o^*)」
ありがとうね。で、もう一通。
「やぁ、生物の授業思い出すバイ。
でも、知識としてはしってたことが、体の中で本当に
行なわれているとこを、見れたなんて、なんか、うらやましい。
なんかすごいね。あと、自分の知らんところで、人の人生は
めぐっているんだなぁ。そう言う俺も、他人から見たら知らない
人生なんだろうけど…。あの時、自分がこうだったときに
こんなことが。ってなんか、自分の時間と重ねて考えてる。
妙な気分。なんか、天気のせいもあるのかもしれんが、
なんか、感慨深く読ませていただきました。なんと、
まだまだ自分の知らない世界の多いことか……。」
多いですよねぇ・・・。知らない事って。
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第八話
2週間後・・・・再び、産婦人科の受付に私はいた。
改めて見ると、本当に混んでる病院である。
受付番号126番。
少なくとも私の前に、125人いたことになる訳である。
ちなみに今日は、ちょっと不安。
実はこの2週間、私は妊婦にあるまじき行為を、多々行ったからであります。
−その1−
海に行った。
普通(?)の人なら、まだおめでた発覚してない頃だっ!
と海で泳ぎまくり、更に荒い波にもまれて、波打ち際にお腹から、
おもいっきり打ち付けられるっ!という荒技をする。
ちなみに同行していた劇団員女性は、足にケガをしていた。
その夜、おめでたを発表し、劇団員から、昼間のおしかりをうけるはめになる。
そのいい訳は「だって泳ぎたかったんだもん・・・」
全然いい訳になってないですね。私ってやつは・・・・。
−その2−
稽古に参加しまくっていた。
劇団員に発表前に、散々運動をしていた。
なわとび1000回。柔軟体操等々・・・・
私ってやつは・・・全く。
まぁ・・・そんなわけで、ちょっと心配だった。
(心配するならやるなって)でも病気じゃないから、
普段通りの生活がいいって書いてあったんだも〜ん。
それこそ本には、安定期に入ったら、テニスなんかもやってた人なら
いいってあったし・・・大丈夫かなぁ・・・・なんて思ってたんだも〜ん。
って、ここでいい訳してもはじまらない。
今日は、とっとと血圧やら体重やら計って、呼ばれるのを待った。
そしてまた、あの先生だったらどうしよう・・・と不安になりながら、
部屋にはいった。実は体重が増えていたので・・・。
不安はとんだ。この間とはうってかわったような先生だった。
「じゃぁ、みてみましょう。」
と、また台にのる。また例の「あれ」をつっこまれる。
一体この物体はどんな形で、どんな大きさなんだろう・・・
と思いながら画面がカーテンから出てくるのを待った。
「はい、みえますか。」
先生が、画面をこっちに向けてくれた。
黒い点ないっ!!!
一瞬「げっ」っと思う。
「わかりますか?これですよ。心臓元気に動いてるね。」
あっ!!!
それはもう黒い点ではなかった。
ミトコンドリアって覚えてる?ゾウリムシっていう感じかなぁ・・・
ともかく、そんな感じのものがぷかぷかあって、真ん中よりちょっと
はじっこに点滅している点がある。
黒い点からミトコンドリアになった!
「まだ2〜3センチだね。」
「そうですか・・・!」
たった2週間で3倍位に大きくなったちびちゃんに、
妙に愛着がわいた瞬間だった。
続く
第九話
ミトコンドリアになった我が子に、愛着を感じつつ台をおりる。
先生と向き合い、お話。
「予定日を決めるのは、次回にしましょう。」
「はい。」
「つわりはありますか?」
「あの・・お腹が減ると、というより、胃が空っぽになると
痛くて・・・あと眠いです。凄く。」
眠い。とにかく眠い。ほんとに眠い。
私の当時の時間は、下記の通り。
−稽古のない日−
PM7時 帰宅:洗濯しながら夕食づくり
PM8時 夕食:その後、洗濯物を干す
PM9時 入浴:干してあった洗濯物をたたむ
その後、台本かいたり、旦那とゲームしたり
PM11時頃 就寝
それが、9時入浴後、もう寝てた。
旦那がゲームやろうと誘おうと、とにかく眠いのである。
これがどうしようもない。
朝だって、えらく眠いのをこらえて起きていた。
「あぁ、それもつわりですね。胃の方は、空っぽにしないようにして、
眠いときは寝て下さい。」
「でも・・・あの・・食べ続けると・・体重増えちゃって・・」
そうっ! 空っぽだと、きりきり痛むので、飴やら小さいパンやら
ヨーグルトやら、ちまちま食べていた。そしたら!
1キロも増えちゃいけない人なのに、体重が増えていたの!!
「ははは・・でも痛いよりいいでしょう。運動して、
増えないように頑張って下さい。
で、今日は血液検査をします。お金の方はかかりますが、
市町村で配布されてる、母子手帳をもらったとき、還付されると
思います。母子手帳は、この用紙を提出すればくれますよ。」
と、先生、一枚の紙をくれる。
おおっ!これが妊娠証明書か。
「あの・・・もうもらってきてます。」
おずおずという私。
「ああ、もらった?じゃぁ、そこに入ってる紙を、
受付に提出して。それで、安くなりますから。」
いわれてみれば、黄色い紙と白い紙で、複写式のものが、数枚入っていた。
「はい。分かりました。」
「ではまた2週間後に。お大事に。」
今日の先生はとても優しい先生だった。この間とは大違いである。
体重・・増えないように運動しなきゃ・・・と心に誓う私だった。
受付に行って紙を出すと、快く受け取ってくれて、
「検査室」の前で待つようにいわれた。
「検査室」
ここは、血圧・体重をはかる所で、前回むっとしたところ。
名前を呼ばれ中に入ると、にこにこした看護婦さんが待っていました。
「おめでとうございます。今日は採血ね。」
おおっ!この病院で初めていわれた。
「はい。」
「初めてのお子さん?」
「はい。」
「お大事にね。」
「はい。」
はいしか言わない私。実は注射は、昔から大嫌いなの。
もう、心臓どきどきの状態なので、はいしか言えない状態だったのでした。
「はい、じゃあ抜きますよ。2本抜きますから、頑張ってね。」
はい終わりですまでが、凄く長く感じました。注射なんて大嫌い!
「これは出産の手引き等、いろいろ入ってますから読んで下さいね。」
と、またまた小冊子がはいった紙袋をもらう。
「じゃあ、あとはお会計の前でお待ち下さい。」
この間の看護婦さんと先生で、えらく病院の印象が悪かったのだが、
今日の先生と看護婦さんで一蹴されてしまった。
旦那にいうと
「おまえってげんきんだな。」
と言われた。仕方ないじゃん。私ってそういうやつだも〜ん。
会計を済ませ、車に乗りながら、黒い点がミトコンドリア状態になった話を、
えんえんとしゃべり続ける私でした。
続く
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
おおっ!もう10ですか。でもまだ「妊娠10週」程度しか進んで
いないなぁ。40週まで、やっていけるのだろうか。
ま、いざとなったら、とばせばいいか。感想メールです。
「おもったこと。「へぇ。結婚してもゲームとかやるんだ。
どんなゲームやってんだろ?プレステで野球かなぁ。」
読み進めて思った事。「なんで、手際?(段取り?)のいい、
初…なのに…って、医者はおもったろう…。」なんか
微笑ましいです。この手回しのよさ…。みつ子さんらしい。
「ははっ。(笑)」って。あと、あんまりミトコンドリアいってると
瑞穂そのうち、大きくなったら、うちらから、「おまえ
ミトコンドリアだったんだって?」ってからかわれやしないかと…。
まぁ、なんにしても、あかるい未来っすねぇ。」
てなわけで、続きです。
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第十話
つわりで痩せよう!なんて考えは甘かった。
胃が痛い→食べる→太る
これを繰り返す日々。一体どうして私だけ・・・・
みっちゃんおめでた!は、あっという間に、仲間内に伝わった。
毎日、いろんな人から電話がかかってきた。
そのたび、「つわり」がなくていいねぇ・・・といわれた。
仕事をもっていながら、つわりのせいで、
どうにもならず会社を辞めた友達が二人いる。
28週位まで、つわりが続き、痩せて顔が碧色になっていた友達もいた。
大体みんな5〜10キロ位、つわりで痩せていた。
なのになのになのにっ!
ど−して私だけ、太るのさっっ!!!
それも、太っちゃいけないのにっっっ!!!!
そんなある日、つわりがなかった人が電話に登場した。
彼女は保母さんで、育児休暇中であった。
「わたし、つわりなくてさぁ・・・」
「えっ!ほんと?」
「胃が痛いんで、食べてたよ。」
「ほんと?」
「炊き立てのご飯の香りが、一番駄目って、みんないうから、
思わず顔つっこんでみたけど、全然平気だったよ。おかげで
仕事続けられたし。」
ほーーーー。炊き立てのご飯の香りかぁ。私も全然平気だ。
「血もしたたるようなステーキが食べたくて、何度も食べちゃった。
魚は駄目。全然食べられなかったよ。」
この電話は、とっても勇気づけられた。実は私も白身の魚が食べたくなかった。
どうにも味がしないのである。さばなんか大好きなのに、みそ煮にしても
塩焼きしても味がない(気がする)。
カレーとかドリアとかグラタンとか、こってりしたものが食べたくて
仕方なかった。みんなにいうと「うそーっ! えーっ!」
とか言われるので、言わなかった。
お粥しか食べられなかった、という友人もいた。
「えっ!お粥なんかみただけで、げろげろだよ。」
という友人もいた。とにかく「つわり」って個人差があるってことが
よーくわかった。体重が増えちゃうのは困ったけど、
仕事が続けられるので、よかった。
私の入社条件が、「出産後も働いて下さい」だったから。
つわりで辞めるはめにならなくて、本当に良かった。
うちの旦那の収入はあまり良くない。
以前DIY部で、これぐらいといったら
「それでやっていけるの?」
と言われたことがある。
ま、だから私は働かなきゃいけない。ずーーーーーっと。
旦那が給料のいい会社に転職しない限り・・・。
(これってちょっと悲しいかも・まいっか)
つわり騒動は、大体16週から20週位でおさまった。
しかし、私の体重はなんと「4s」も増えてしまっていた。
えーん・・・!(;_;)
続く